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忘備録 思考録 未来日記

薬学教育6年制の経緯と薬剤師の需給状況

「残る薬剤師」「消える薬剤師」 (ZAITEN BOOKS)

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第1章 「薬学教育6年制」の衝撃 

 薬学教育は4年生から6年生へ移行した。そもそも薬学教育は、調剤よりも創薬の教育に重きが置かれ、基礎科学とくに有機化学に関する学習内容が厚く、医療ケア従事者としての教育内容は薄い状態であった。例えば実習教育については1週間程度、加えて見学実習程度であった。

しかし、1992年に医療法の改正がなされ、薬剤師が「医療の担い手」として明確に位置づけられれることとなった。これは調剤業務、病棟圧胴、医薬品に対する総合的なリスク管理などの業務拡大などの中で、医薬品を通じて患者をケアする視点をつける声にこたえるためのものであった。

当時の文部省や国立大学などの薬学教育サイドは、4年生教育で十分という立場であり、薬剤師の監督官庁である厚生省とは異なる見解であった。そのため1994年には厚生省が「薬剤師養成問題検討委員会」を設置し、薬学教育6年制を打ち出したものの、文部省再度では1996年に「薬学教育の改善に関する調査研究協力者会議」が4年制教育堅持を打ち出した。その後省庁同士と薬剤師会などの職能団体、高等教育機関などで相互に議論が行われ、2002年に文部科学省が6年生を容認し、学校教育法及び薬剤師法が改正されて6年制へと移行することとなった。

6年制化によって、基礎薬学に留まらない医療薬学に関するもの、医療人としての技能や態度に関する内容、問題解決能力の涵養といった深い知識を獲得するモデル・コアカリキュラムに準拠した学部教育、及び病院や薬局での長期実務実習が行われることとなった。

4年生では薬学共用試験が行われ、全国の薬学部教育で統一基準で行われる試験で、これをクリアしないと長期実務実習を行うことができない。客観試験CBTと、客観的臨床能力試験OSCEとが行われ、適格性が審査される。

長期実務実習は、薬局11週間、病院11週間行われ、これまでと異なり見学ではなく参加型の実習である。一つの薬局で受け入れることのできる薬学生の人数は2人まで。調剤や情報活動、医薬品管理など病院・薬局共通の内容とともに、病院では病棟活動、院内製材、注射剤調剤、薬局では窓口業務、薬局製剤、在宅医療、OTC医薬品などについて学ぶ。

2011年度(2012年3月)に6年制教育の初めての卒業生がでたが、入学者は1万3千人余だったが、修了者は約8,600人。薬学共用試験段階で相当数が進級できなかったこと、合格ライン以下の学生を国家試験を受けさせなかったようなことが要因。

2012年4月採用は、病院において空白の2年間で欠員が生じ、また病棟薬剤業務実施加算が新設されたことから、病院薬剤師の採用枠が多く、調剤薬局の採用は苦戦した。それ以前は調剤薬局が3割以上、進学が25%で、病院は17%であった。(2009年)

薬学部の定員割れは、2010~11年に続いたが12年には充足している。しかしながらこれは全体の話で、個々の大学では定員割れが続いているところがあり、2012年度は19校が定員割れ。充足率が70%以下の大学には文部科学省は指導をしている。

 

第2章 薬剤師過剰時代の到来 p39-

薬剤師は供給過剰と言われている。2007年の厚労省「薬剤師需給の将来動向に関する検討会」によると、数字の上では単純計算で2011年度に7万5千人、14年度には8万4千人が過剰になるとされている。しかし、これは地域偏在も原因で、都市部では調剤薬局やドラックストアの出店でむしろ薬剤師不足が発生している。また薬剤師の6割以上は女性であり、入社4-5年ごろから結婚による休職や退職がある。再教育なども検討が必要。