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東日本大震災支援 さいたまスーパーアリーナの避難所における埼玉県立大学学生の支援活動について(2011.4.15)

東日本大震災支援

さいたまスーパーアリーナの避難所における埼玉県立大学学生の支援活動について

 東日本大震災によって埼玉県へ避難をしてきた方々に対して、さいたまスーパーアリーナが避難所として開設され、本学学生及び教職員がボランティアスタッフとして活動した。その経過及び実績について記し、今後の被災者・被災地へのボランティア活動の本学の取り組みの参考になればと考え、以下、報告する。

 

1.経過

3月17日(木)>

さいたまスーパーアリーナに5000人規模で人が収容されるとの報道を受け、収容時の生活支援が必要と考え、現地の担当者に話をうかがいに赴く。担当者(都市整備課職員)に、県立大学で組織的にボランティアを行う用意があることを伝える。すでに200人程度の避難者が生活していた。

〇情報では、31日までの退去、食事は出さないなどの条件で、入居を許可していた模様。ゲートキーパーの対応に対しては、複数NPO関係者から「好ましくないものだった」との指摘がある。

 

3月18日(金)>

〇朝、スーパーアリーナに赴き、埼玉県社会福祉協議会担当者に対して、県立大学でボランティアを組織する用意があること、そのメリットについて記した説明文書を作成し提示する。県社協担当者は、ボランティアは現在募集していないこと、今後組織的に募集する際には連絡することが伝えられ、連絡先を伝える。

〇午前、学長と県立大学での被災者の受け入れ、およびさいたまスーパーアリーナでのボランティアの組織化について相談。事務局副局長、佐藤雄二教授、次期学長三浦教授も同席。ボランティアコーディネートを行うことを指示される。

〇午後より、ボランティア募集に関して学内社会福祉学科学生にメールを流す。Gmailのアカウントを作成し、参加希望者はspu2011volunteer@gmail.comにメールを送るようにし、案内のメールを送付する。申し込み時には、学籍番号、名前、携帯電話番号、携帯メールアドレス、参加可能な日程を、統一の様式にて挙げてもらう。

春日部市社会福祉協議会から、老人福祉センターでのボランティア活動について打診があり、教務を通じて募集を一元化することが要請される。健康開発学科若林准教授と、看護学科新村講師に、老人福祉センターでのボランティア活動の調整を依頼(のちに共通教育の五條教授にも協力いただく)。

〇マスク、名札などを調達していただく。

〇18日夜より、徐々に参加希望学生からのメールが届く。

 

3月19日(土)>

〇午前中、自宅より、学内の学生に募集を試みる。WEBメールのためアドレスの設定が十分ではなく、学内の各学科一部の学生のみに送信したことがのちにわかる。その他、mixi県立大学のコミュニティに投稿する。

〇3月19日午後、スーパーアリーナに訪問。双葉町より徐々に避難者が来ており、観光バスからの荷物運びに携わる。健康開発学科佐藤教授とも連絡を取り合い、現地で会い今後の対応を協議。最終的には1200人の人々からの訪問がある。萱場現副学長にも連絡し、アリーナで合流。医療スタッフのことについて担当医師などと相談。看護スタッフの不足が予想されるので、ぜひ来てほしいとのことだったので、看護学科新村講師に連絡し、看護学科教員に連絡していただく。

〇すでに作業療法学科卒業生なども荷物運び等の活動をしていた。

〇埼玉県社会福祉士会が相談支援をすることを決めており、20日から参加意向のある学生については相談支援の補助スタッフとして活動してもらう見通しをつける。

 

3月20日(日)>

〇朝、社会福祉学科学生7名らがスーパーアリーナに集合。名札、マスクをわたし、これまでの経過と、注意点などについて説明。その後埼玉県社会福祉士会の補助スタッフとして避難所での支援を行う。

 

3月21日(月)>

〇朝、連絡を取り合っていた社会福祉学科高辻講師とスーパーアリーナで合流。参加学生は15名程度。高辻講師を中心に、さいたま市保育課が開設していた幼児の相談・遊び支援のコーナーでの活動と、子どもの保育・遊び支援の活動ルートを確保。埼玉県社会福祉士会の補助スタッフのルートとともに、活動を行う。高辻講師に任せ、新井は帰宅。

〇春日部の老人福祉センターに関する要請については、学生の応募もあり、参加可能学生の取りまとめとリストを若林講師を中心に行ってもらう。リストを春日部市社会福祉協議会に提示し、個別に連絡を取り合ってもらうように伝えたところ、シフト(朝、昼、夜中)を組むところまでこちらで実施することを望んでいた模様。個別に連絡をしたり連絡が来たりするのでは対応できないという理由で、今回は受け入れない、との連絡を若林講師が受ける。

 

3月22日(火)>

〇スーパーアリーナにて朝、参加学生の確認。15名程度。高辻講師とともに、保育のルート、社会福祉士会のルートに振り分け、両方の活動責任者と調整をして、学生は活動を行う。新井、高辻講師はその後出勤。

 

3月23日(水)>~<3月31日(木)>

〇スーパーアリーナにおける朝の参加学生の確認、振り分けについても学生にほとんど任せ、必要に応じて連絡を取るように伝える。3月29日には、今後の見通しや騎西高校に移転後の活動可能性について、各ボランティアの責任者に打診し、連絡先を伝える。

 学生からの最終報告を受けて、アリーナでの活動は終了とする。

 

 

 

2.登録学生数・参加学生数など

登録学生数  77(新入生を含む)

看護学科4年(卒業生)1  

看護学科3年(現4年)16  2年(現3年)8  1年(現2年)1  新入生1

理学療法学科3年(現4年)2  1年(現2年)2

社会福祉学科3年(現4年)13  2年(現3年)17  1年(現2年)8

作業療法学科1年(現2年)2

健康開発学科3年(現4年)2  2年(現3年)1  1年(現2年)3

  *一斉メールがうまくできなかったため、本活動を知らない在学生が多数いるので、学科の比較はできないことに注意。

延べ活動人数 おおよそ200人程度(現在再度確認中)

一緒に、横浜国立大学日本大学青山学院大学桜美林大学等の学生も活動を行う。

 

3.活動の内容

〇保育:さいたま市保育課、保育活動の主軸となっていたNPO法人彩の子ネットワークなどから要請を受け、屋外・屋内の保育、散歩や公園での遊び支援、図書館の運営、迷子の確認など。

〇相談支援:社会福祉士会やその他の団体とともに、健康や介護に関する相談や困ったことについての聞き取り。入院・入所事務手続きの補助など。

〇ごみ:ごみの回収

〇仕分け:救援物資や避難者の荷物などの仕分け。

 

4.学生による活動内容の報告・感想の抜粋

〇保育班で、子供たちと大縄やブロック等で遊びました。子供たちが思いっきり走ったり大声を出したりできる環境を作ってあげることが、とても大切だと感じました。また子供たちの笑顔に私たちが励まされました。      

〇私は中越地震などで身近な人や地域が被害を受けたとき、多くの方々に助けられました。今回、私も何かしたいと思い活動しました。ボランティアについて改めて必要性や弊害を考える機会になりました。ありがとうございました。     

さいたま市の保育では、基本的には保護者と一緒に遊び場に来た子供と遊びました。保護者が病院に行く等、理由がある場合のみ預かりをし、その際には担当の学生が1対1で必ず付くようになっていました。

洗濯班では、洗濯を希望する被災者の方と、自宅で洗濯しても良いと言ってくださっているボランティアとのマッチングを行いました。具体的には、被災者の方から洗濯物を預かり、ボランティアに連絡をし、ボランティアにはアリーナまで洗濯物を取りに来て、洗濯・乾燥が終わったらまたアリーナまで持ってきてもらい、ボランティアから被災者へ直接連絡をとって洗濯物を渡してもらうという流れになっていました。他にも、シャワー希望者のWith youへのご案内もしました。"           

〇遊んでいるうちに子どもが笑顔になるということが活動を通して1番嬉しく思えた点です。今回ボランティアの機会を与えていただき、ありがとうございました。これからも自分が出来ることを探して行動にうつせるよう生活したいと思います。           

〇今回とても貴重な経験をさせていただきました。微力でしたが少しでも役に立てたのならば幸いです。

〇内容は朝.昼.夜の食事後のゴミ収集で2.4.5階のアリーナ内に設置されたゴミの捨て場所に向かい、生ごみ、燃えるゴミ、燃えないゴミ、ビン.カン、新聞、段ボール、トイレのゴミなどを集めて回り1階のゴミゲートまで運びました。また廃棄となるパンやお弁当を袋に詰めたりもしました。アリーナで過ごした数日間学んだことや得たものがたくさんありました。ボランティアに参加して本当によかったと思います。ありがとうございました。

〇今回ボランティアに参加してみて、まずボランティアに来ていた人の多さに驚きました。各々の人が「サポートしたい」という強い思いで来ているのだな、と思うと大変温かい気持ちになりました。

突然慣れない土地に移ってきて不便な生活を強いられているにも関わらず、笑顔で遊んでいる子どもたちの姿を見て、こちらの方が元気をもらいました。中にはお母さんが恋しくて泣き出してしまう子もいて、そういう子たちを目の前にしてただオロオロするしかできない自分の無力さというのも感じました。

今回のボランティアで、さいたま市班の方や子どもたちの保護者の方などさまざまな方と関わることができたのは良い経験になりました。

今回のように、埼玉県の施設を避難者の方に提供して支援するということは初めての取り組みだったと思うのですが、どういうボランティアの団体がどういう取り組みをしているのか、といったボランティア全体としての情報が知れたら良かったなと思いました。"       

〇参加すること自体もとても悩み、自分の無力さに毎日毎日涙していましたが、先輩方をはじめ、被災者の皆さんの協力を賜り、最後まで活動させて頂くことができ、本当に感謝しています。

最終日には、初日とは違う意味で涙を流すことができ、達成感すら感じられました。と申しましても、復興はまだまだこれからで、今後とも更なる協力の必要性を改めて実感いたしました。

私にできることはほんの僅かかもわかりません。しかし、できることがあるかぎり、どんなことでも協力させていただくつもりでおりますので、今後ともよろしくお願いします。

今回は大変貴重な活動に参加させていただき、ありがとうございました。この体験は一生忘れません。お疲れさまでした。"        

 

5.活動の調整役を行った学生の最終の活動報告のメール

お疲れ様です。最終日の活動とまとめなどを報告致します。本日は保育班(外遊び)のみでした。内容はいつも通り避難者の子どもやボランティアさんの子ども達と一緒に遊び、16時頃には撤収となりました。

特に大きなトラブルも無く、アリーナ自体も16時頃にはほぼ全ての避難された方々の移動が完了されていました。

後に〇〇さんなど保育班の関係者さんとミーティングをして、保育班は解散となりました。また何かあれば学校や先生方に連絡が行くかもしれません。(〇〇さん的には学校などに連絡するのは苦手だから個人的に連絡するかも(笑)とのことです)

一応県大ボランティアでもミーティングをして今回のアリーナでのボランティアは全て終了という形になりました。上手くまとめられたかは不明ですが、円満に終わらせることは出来たと思います。

余談ですが、〇〇さんがテレ朝のインタビューに嫌々答えたそうで、僕と〇〇くんは埼玉新聞のインタビューを受けました。テレ朝はゲリラ的だったので使われるかは不明ですが、埼玉新聞は名刺を頂き「恐らく使われます」とのことでした。両方とも学生がボランティアに参加することについての内容だったと思います。一応ご報告致します。

最後になりましたが、色々と連絡調整などで先生方にはご迷惑をお掛けしたと思います。リーダーとして機能出来たかは分かりませんが何とか終えることができました。避難者の方々は引き続き大変な生活が待っているので安心することは出来ませんが、学生としてこれからも何かしらの支援ができればと思います。

長文になってしまいましたが、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。

 

 

6.今後の災害学生ボランティアコーディネートの課題(現在まで感じている点)

〇学生への活動周知方法と、活動先・活動予定の集約の迅速化・効率化(非常に時間がかかった)

〇どこまで教員が行い、どこまで事務局が行い、どこまで学生自身が主体的に行うかについての事前のシミュレーションと研修・教育。

〇ボランティア養成団体に対して、本学ができる範囲やできること(技能・割ける労力)などについての明確な意思表示。

〇調整業務を行うスタッフ(学生や非常勤スタッフ)の確保とノウハウの蓄積・継承。

〇ボランティアの調整団体・コーディネート機関とのパイプの確保・方法の蓄積・継承。

〇緊急時に使用するある程度の資材の確保

  (名札は新井が自宅のプリンタで作成。マスクなどの調達。軍手など)