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忘備録 思考録 未来日記

北本市学童保育連絡協議会  2010年度活動報告(2011.5月頃作成)

1.指定管理者制度と大規模分割がセットで投げかけられた2009年度

北本市学童保育連絡協議会は、設立から30年以上を過ぎ、現在では公設民営方式で8小学校区で11の学童保育室を運営しています。

指定管理者制度に関しては、地方自治法改正時より、市側から制度導入とNPO法人格の取得を要請されてきました。実際、北本市内においては、子育て支援関連では、障害児学童保育室、療育センターなどに指定管理者制度が導入されるに至っています。

連協では市側に対して同制度が導入されると保育の継続性が損なわれるのではないかという不安などについて意思表示をしており、市側も強硬な導入には至らないできました。

しかし、2010年4月から71人以上の学童保育室には補助金が下りないといういわゆる大規模問題との関連で、市側は、大規模学童を分割するが連協指定管理者制度導入とNPO法人化を受け入れる(A案)、厳格な入室基準を市側が設け、大規模学童の児童の足切りを行って分割は行わない(B案)、という2つの案を提示し、どちらにするのか、という提案を持ちかけてきました。

本来性格が異なるはずの、大規模分割問題と、指定管理や法人格取得の問題とが、取引材料として提示されたのでした。最終的には、市長も交えて、2009年度の連協役員が面談し、A案の分割・指定管理を受け入れたという市側の認識でありますが、指定管理者制度導入に関する具体的な説明は父母や指導員に全くありません。このように大規模分割問題と取引に使われた感があることについては、不信と疑念は晴れることがありません。この疑念や不安について市側に文書で投げかけたものの、回答はなく、市側に認識としては近い将来には導入したいということを表明してきました。

 

2.2010年度は指定管理者制度対策特別委員会で学習と具体的活動を実施

連協では2009年度より指定管理者制度特別委員会を設ました。2010年度も新たな委員たちは何が問題かがわからないという段階から学習を続けましたが、委員になった親たちは、勉強すればするほど、指定管理者制度導入反対の認識を深めました。同委員会の議論の成果を取りまとめ、議員懇談会を開催しました。この春の統一地方選挙では、市議会議員及び市長選挙があり、立候補予定者に対してアンケート調査を実施しました。回答候補者が少なかったものの、関係者の合意なき指定管理者制度の導入に対して反対の意思表示をした市議会候補者はすべて当選しました。しかし、学童保育への指定管理者制度導入に反対の意思表示をした市長候補者は落選し、現職が再選されており、その考えに同調するであろう議員も多く、現在勢力は拮抗しているところです。

一方、市担当者と連協役員等とは、何度となく、指定管理者制度について投げかけがされています。また201012月には、保健福祉部長、子ども課長などが指定管理者制度についての説明を実施しました。参加した保護者からは、これまで述べたような疑念がある点、全国的には学童保育への指定管理者制度導入によって弊害が多数報告されている点、業務委託形式でそもそも問題はないという点、また今の父母会・指導員の運営においても組織基盤・運営基盤がぜい弱なため、単にNPO法人化しても指定管理に耐える運営体制は整えられていない点、などについて訴えました。

連協としても、これまで8学童の運営に関して、管理的経費は全く計上することなく丸投げしてきたことについて改めて訴え、NPO法人格の取得に耐えうるような組織基盤・運営体制が整えられるように、人的・金銭的支援をすることを約束させました。その結果、2011年度予算より、管理的経費の一部を委託料に上乗せして予算化しています。また、万が一導入された時には、選考委員会に利用者代表を入れるように訴え、「検討する」との回答を得ました。しかし、行政担当者には、運営基盤の確立と指定管理者制度とは分けて考える必要があることを申し述べましたが、市側としては、このような約束は、指定管理者制度導入を前提としたものであるという認識を変えようとはしないと思われます。

3.社会的責任のある子育て支援団体へ:NPO法人格の取得に向けての取組

「保育に欠ける」児童を対象に、父母と指導員が手弁当によって運営が行われてきた学童保育の時代は終わり、学童保育による子どもの生活・遊びの支援の必要性は誰もが認識する時代となったと思います。そんな中で、多くの父母は、ただでさえ金銭的にも時間的にも負担を強いられる学童保育の利用と運営へのかかわりを、何とかしてほしいと考えているのが実際です。そんな中で指定管理者制度が導入され、ひとつの業者としてみなされて競争せざるを得ない環境に追いやられることは、指導員はもちろん、父母にも大きな負担をさらに強いることになります。

大きな負担がありながらも、子どもが生き生き育つ環境をつくっていくために、指導員の雇用を守り保育の質を向上させ、1億数千万円の事業規模に見合った透明性ある安定的な事業運営を作ることも、待ったなしの状況です。連協では2010年度にNPO設立に関する特別委員会を設けて、他市から講師を招いて勉強会を開催し、毎月議論を重ね、理事予定者等も交えて3度の設立準備会議を実施しました。そして2011429日に開催した第33北本市学童保育連絡協議会総会は、「特定非営利活動法人北本学童保育の会うさぎっ子クラブ」の設立総会と併せて開催し、連協組織のNPO法人格への移行が承認されました。

法人設立が承認され、今後は2年任期の理事による理事会を中心に、財務委員会、人事・労務委員会、保育事業委員会などの委員会活動の活発化を図る必要があります。また理事となった父母のみならず各学童保育室の指導員による積極的な運営・経営への関与を通じて、持続可能で安心して預けられる学童保育事業とともに、北本市全体の子育て支援に取り組めるような活動団体への展開が望まれます。これからが正念場です。

 

4.「運動性」をどこに担保するか/持続可能な「運営性」をどう育むか

市が進めようとしている指定管理者制度については、担当者や賛成議員らは、「これまで通り親の会である連協に指定すればよい」としていますが、「でもそれが継続するとは約束できない」という但し書きがあるものです。NPO法人格取得は、自立した市民による責任ある子育て支援団体としての学童保育運営団体への成長を目指すものですが、継続性が担保されず競争にさらされるような単なる一事業者扱いは、行政と市民とを分断し、協働して子育て支援事業をつくりあげていく契機を、失わせてしまうということを訴えていく必要があります。

しかしながら、NPO法人となった場合、あからさまに法人が指定管理者制度導入に対して反対を表明することは、制度導入推進派から見れば、「既得権の確保のために市民を動員する危ない法人」とみなされてしまいかねません。万が一制度導入が政治決着した場合、そのようなレッテルを張られてしまうのは得策ではないでしょう。

このような意味で、特に公設民営形式で父母会団体による学童保育事業の展開は、大きな節目を迎えています。今までは質の高い学童保育事業の展開する「運営性」と、学童保育政策の不備をただし要求を実現させる「運動性」とを、学童保育連絡協議会の中で二重に位置づけてきました。今後も「運動性」は非常に重要ではありますが、多様な価値観や制度に対する認識がある中で、「運営体」による「運動性」の行使は、受け取り方によっては「エゴ」とみなされかねません。

「保護者と指導員とが一緒になって運営する」という「協働性」が学童保育の良さでした。それは今後も揺るがないとしても、今後さらに「運動性」を大事にする必要があるのは、改めて、父母ないしは父母会なのだと思います。北本市では、NPO設立を契機に、各学童保育室の父母会連合会を組織化していただきたいと働きかけています。

一方で、「運営性」についてさらに真剣に考えていくにためには、運営に携わる父母はもちろん、指導員集団の力がますます大きくなるのではないでしょうか。

県連協には、今まで以上に、このような時代の状況に見合った保護者及び指導員向けの研修等の事業展開を望みます。よろしくお願いいたします。